毎年ニュースにもなりますが、不登校を経験する子どもが年々増えています。学校に行こうとすると頭痛や腹痛・めまいに苦しんだり、不安や気分の落ち込みで身動きが取れなくなったり、心身の困難さを抱える子どもをどのようにサポートをしていくかは家族にとっても社会にとっても大きな課題です。
私の心理支援のスタートは立川市の不登校支援から始まっています。立川市内の公立中学校にある当時「相談学級」と言われていた学級の支援員として、そして立川市の適応指導教室たまがわ(現在の教育支援センターたまがわ)の相談員として、子どもや保護者の相談をお受けしていました。その後、他の自治体のスクールカウンセラーや教育センターでも同様に不登校支援に携わってきました。大学院の頃には不登校経験者へのインタビューを取り分析する研究を行いました。きっかけや不登校期間中の困難な体験、そして復帰に至るまでのプロセスを当事者本人の語りを通して調査しました。このような経緯もあり不登校支援にはずっと関心を持っています。
この記事は保護者自身へのカウンセリングのすすめということに焦点を当てたいと思います。不登校支援は主に教育センター、スクールカウンセラーといった自治体や学校が持つ相談機関が中心になっています。また、民間のフリースクールが子供の居場所を提供しています。このような様々な社会的な資源がある中で、対応しきれない点を担うのが私設カウンセリングオフィスの役割と考えています。この記事は「親が子どものために」受ける相談ではなく、「親が自分自身のために」「親自身が楽になるため」の相談を受けることの提案です。
子どもが学校に行かなくなると、親はさまざまなプレッシャーや負担にさらされます。周囲からの視線もそうですし、学校との連絡を頻繁に取らなければいけなくなったり、直前でキャンセルになることも多い送り迎えの負担(学校だけでなくフリースクールや習い事なども)、進路の心配、家庭内での関わりの難しさなど、ただでさえ忙しい日常がスムーズに運ぶことは少なくなり、多くの心配や苦労が絶えません。日々の苦労もなかなか目に見える形での成果にはつながらないと感じることも多いかと思います。その結果、保護者自身が精神的にも身体的にも疲れ切ってしまうこともあります。そして、保護者が心の余裕を失ってしまうと子どもに合わせた温かい対応が難しくなったり、不安や苛立ちを子どもやパートナーにぶつけてしまう場合もあるでしょう。そうすると、それに反応して子どもが家で安心感を失ってしまう、学校に行けない罪悪感を積もらせさらにとじこもってしまう...という悪循環に至ってしまうこともあります。
親は、子どものためだけに生きているわけではなく、夫や妻として、生まれ育った家族の子どもとして、職場の一員としてなど、様々な立場を担っています。家族のことに加えて自分自身のキャリアや人生についても様々な悩みを抱えている一個人として、どのようなことでも話せる場所があると大きな安心感があります。
- 生まれ育った家族関係
- パートナーとの関係
- 職場やキャリアについて
- 自分の人生・生き方について など
家族のことに加えてこれらのことも自由に話し気持ちの整理をできるのが私設のカウンセリングオフィスを利用するメリットです。親が安心して生きていくことができると、それは結果として子どもの安心感にもつながります。どの方も子どもの頃親のいらだちを足音や食器を置く音一つで感じとっていた経験があるでしょう。同じように、親が安心している状態も子どもは敏感に感じ取っています。親が鼻歌を歌って食器を洗っていたり、趣味を楽しんでいる様子などを見ると、子どもは気楽にリビングで過ごすことができます。親が「子どものこと」の相談ではなく「自分のこと」のために時間を使えることは、結果的に家庭の良い雰囲気につながります。
さらに、カウンセラーとの間での保護者自身が気持ちのやり取り体験することで、子どもの気持ちをどのように受けとめられるといいか、感情の扱い方や共感的に聞くことを自然と学ぶ機会にもなり得ます。ですので、不登校の子を持つ保護者に限りませんが、親がカウンセリングを受ける良い影響は様々なところに波及します。(同様の観点から、教員や看護師、医師、心理士など対人援助職の方のカウンセリングもおすすめしています)
不登校の子どもの支援は出口の見えないトンネルと例える保護者の方もいらっしゃいました。少しでもその難しさのサポートができればと思います。もちろん保護者の方だけでなくお子様のご相談も可能です。
参考までに、不登校支援関係のリソースを立川市のHPで見やすくまとめてられていますので載せておきます。
https://www.city.tachikawa.lg.jp/kosodate/gakko/1004252/1023261.html